ビートルズ・ブートレグ界、1999年最大の話題はなんといっても
ジョン・バレット音源だろう.アビーロードスタジオのエンジニアだった
彼が、病気の療養中に、倉庫のテープ調査を行い、それを元に
1983年のイベントアビーロードショウ、アルバムSESSIONS
(ライナーにも彼の名前が記されている)、
マークルイソンの名著レコーディングセッションが生まれたことは有名だ.
彼がテープや書類調査の傍ら、未発表曲や未発表テイクをいくつかリミックスし、
サンプルとしてテープに落としておいたものが、彼の死後15年たって、
この世に出てきたわけだ.音質はもちろん抜群に良い.

その中でも、ここではGET BACKについて焦点をあてる.
GET BACKはご存じのように、SESSIONSと並ぶ、ブートの大名盤であり、
LP時代から、数多くのブートが出回っている.
しかし、それらは1969年5月28日にグリンジョンズが完成したミックス
(1st mix)を元にしており、
今回発掘されたものは、グリンジョンズがやり直しを命じられ、1970年1月5日
に完成されたもの(2nd mix)である.ビートルズはこれも気に入らず、フィル・スペクターに
プロデュースを依頼した為、これらのミックスは没となり、タイトルもLET IT BEに
変更されたため、アルバムGET BACKは幻となったわけだ.
尚、ジョンバレットの所有テープではあったが、彼はこのミックスには無関係であると
思われる.

GET BACKとオフィシャルのLET IT BEはミックスやアレンジが等全く異なっており、
同じアルバムとは思えない.
特にフィル・スペクターは、お得意のオーケストラなどの音を足して厚みを増しているため、
LONG AND WINDING ROADなどは別の曲として考えた方が良いくらいだ.ポール・マッカートニー
がこのアレンジに激怒したのは有名な話だ.逆に、ジョンやジョージなんかは、けっこう
気に入ったようだ.そうでなければ、ソロアルバムのプロデュースを頼みはしないだろう.

前置きが長くなったが、masterdiscも、このGET BACK 2nd mixをリリースした.
他のメーカーも出しているとはいえ、やはり名盤GET BACK.出さないわけにはいかないだろう.
彼等は今回は、GET BACKのアセテートを元にして放送されたラジオ番組を収録した
WBCN RADIO MASTERと併せて2枚組でリリースした.
彼等は、1st mixについても、rooftop concertも併せた決定版ともいえるものを
リリースしており、GET BACKに対する彼等の思い入れが感じられる.

表ジャケを見て、おや?と思った人もいるだろう.
彼等は、GET BACK with Across the Universe and 11 other songs
と書いている.このパターンは初めてではないだろうか?

ということで、まずはこのタイトルについて論じてみたい.

★ GET BACK TITLE maniax

一番よく知られているのが
GET BACK with Don't Let Me Down and 9 other songs
だろう.この場合の9 other songsとは、MAL EVANSの解説より、
ONE AFTER 909/DIG A PONY/I'VE GOT A FEELING/FOR YOU BLUE/TEDDY BOY/
TWO OF US ON OUR WAY HOME/DIG IT/LET IT BE/THE LONG AND  WINDING ROAD
と推定される.全部で11曲である.ここでは、link trackとして入れられたSAVE THE
LAST DANCEやMAGGIE MAY、繰り返しになるGET BACK REPRISEは曲数にカウントされていない.


さらにもう二つのパターンがあり、
GET BACK with Let It Be and 11 other songs
LET IT BE and 10 other songs
このふたつは写真を見ても分かるように、オフィシャルでもこのジャケが検討されていたと
思われる.更に、上のものから下の物へと変更されたことが分かる.


ここで、これらのタイトルが、1st mixの時に作られたのか、2nd mixの時に作られたのか
はっきりさせるために、簡単な推理を行った.
(オフィシャル用であるなら、2nd mixの可能性もある為)

上のバージョンだと、全13曲になるが、これは2種類の解釈ができて、
1)1st mix時に作られたものなら、上記の11曲にSAVE THE LAST DANCEとMAGGIE MAE
を足して全13曲
2)2nd mix時だとすると、1st mixからTEDDY BOYを除いて、2曲を足しているため、
普通に考えると全14曲になってしまう.
ONE AFTER 909/SAVE THE LAST DANCE FOR ME/DON'T LET ME DOWN/DIG A PONY/
I'VE GOT A FEELING/GET BACK/LET IT BE/FOR YOU BLUE/TWO OF US/MAGGIE MAE/
DIG IT/THE LONG AND  WINDING ROAD/I ME MINE/ACROSS THE UNIVERSE
ここから、少し強引だが、完奏していないSAVE THE LAST DANCE FOR MEを除いた13曲を指すと考えることもできる.

LET IT BE and 10 other songs
については
1)1st mixだと考えると問題なしで、link trackを除いた11曲である.
2)2nd mixで11曲に絞るのは無理である.link track扱いにもできる
SAVE THE LAST DANCE FOR MEとMAGGIE MAEを除いても12曲であり、
11曲にするのは不可能である.

タイトル変化の時系列を考えると、2nd mix→1st mixとなることは不可能なので、
どちらも1st mixの為に付けられたタイトルだと結論することができる.

(ほっとかれた時間は1st mixの方が圧倒的に長いので、その間にジャケが作られたと
思えば、自然に考えてもそうなるが(笑))

masterdiscは上記のタイトルをもじって、
GET BACK with Across the Universe and 11 other songs
としたが、上記の考察によると、2nd mixを全13曲と考えるには
SAVE THE LAST DANCE FOR MEのみを除く必要があり、少し不自然なので、
どうせならGET BACK with Across the Universe and 12 other songs
にした方が2nd mixのCDとしてはよかったのではないかと思う.

★ GET BACK JACKET maniax

GET BACKのアルバムジャケットが、デビューアルバムのPLEASE PLEASE MEを
真似ているのは周知のことである.これがたったの6年間に起こったものだと
思えないくらいの変化がある.このジャケットは、GET BACKに使われなかったため、
公式には赤盤、青盤のジャケットに使われた.
この、EMI本社で撮られた写真には、二種類のものがある.
それは服装で区別でき、

1)リンゴ・ポールがダークパープルのジャケット、ジョージ・ジョンが白地に紺のストライプの
ジャケットを着ているもの
2)順に、ブルー、ダークブルー、えんじ色、ダークブルーのジャケットを着ているもの

の2種類である.どちらも手の組み方も含めて、同じ姿勢をとっている(微妙に違うが)



服装について詳しく書くと、
1)リンゴ:ジャケットはダークパープルでベルベット地.紺のシャツに白いネクタイ
ポール:ジャケットはダークパープルでベルベット地
ジョージ:ジャケットは白地に紺のストライプ.シャツは明るいラベンダー色でノーネクタイ
ジョン:ジャケットは白地に紺のストライプ.シャツはおそらく白地のバンドカラーシャツで、
ペンダントかループタイをしている.

2)リンゴ:ジャケットはブルーでベルベット地かカシミア.白地のシャツかベスト.
ポール:ジャケットはダークブルー.
ジョージ:ジャケットはえんじ色のダブル.
ジョン:ジャケットはダークブルー.白シャツに黒のネクタイ.

である.髪型がほぼ同じことから、同じ日に撮影された物だと思われる.
特にリンゴやジョージの髪は2)のほうがなめらかに見える.ブラシでもあてたのだろう.
青盤では1)の写真を用いている.今までのGET BACKの海賊版のジャケも、1)がほとんどだ.

注目すべきは、リンゴの左の窓の枠の引っかき傷が、2)のほうが少ない.
さらに、ジョンの下に、円筒状の何かが2)にはある.1)はその部分が
写っていないのでなんとも言えないが、
写真を撮った階が1)と2)で違う可能性もある.
これは実際には何階だったのだろう??

今回のmasterdiscのジャケは、一部を拡大しており、色合いもかなり異なっている.
以前のより、鮮明になった感じだ.見慣れていないので、多少の違和感はあるが...

最後に、私見ではあるが、彼等の着ていた服は、おそらくそう高価なものではないだろう.
彼等は、楽器さえも、安いものを使っている.ポールがヘフナーやエピフォンを使っていたのは、
安くて、十分良い音が出るからだと言っている.楽器にさえ無駄なお金をかけない彼等が、
服にお金をかけるだろうか?現在までも、彼等が高価な服を着ているところをほとんど見たことが
ない.ヘフナーやエピフォンは、ビートルズが使わなければ、二流メーカーのままで終わった
可能性もあるのだ.リッケンバッカーだってどうなっていたか分からない.
これが彼等の凄いところだと思う.ビートルズが使えば、それらは輝いたのだ.
もちろん、ギブソンやフェンダー、ルードヴィッヒなど、一流メーカーのものも使っているが、
ブランドに執着せず、超一級の音楽を作ったビートルズはやはりかっこいい.
そういう彼等が、ブランド物の服を着ることはなかったと思う.それでも、彼等は
すごくかっこいい.これは素晴らしいことだと思う.

このことをどこかで書きたかった.

GET BACKの内容については次回に論じる予定である.
 


Special Thanks to Mr.青ちゃん、Mr.ひさっち